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シロアリの発生原因とは?
対策方法をプロが解説!
2024年5月公開
戸建住宅に住んでいる方にとってはやっかいな存在であるシロアリ。
なんとか防ぎたいところですが、なかなか難しいものです。
まず必要なのはシロアリの発生原因が何かを特定すること、その原因を知ることで適切な対策を行なうことができます。
発生する原因そのものや環境を作らないことが、シロアリ被害の予防に繋がるのです。
今回はシロアリの発生原因や好む環境を詳しく解説し、シロアリを防ぐための方法をプロの目線から紹介します!
シロアリが発生する主な原因
シロアリは生き物なので、生きるために不可欠なもの、快適な(好まない)環境というものが存在します。
シロアリが好む環境は被害に遭いやすい条件です。
それらを失くせば自ずと気をつけるべき点が見えてきます。
シロアリが生きるために必要な「モノ」
シロアリをはじめ生き物が生きるためには、「酸素」・「栄養」・「水」が必要です。
シロアリにとっての「栄養」とは木材成分のセルロースと呼ばれる物質です。
そして、木材の中でも、柔らかい物を好みます。
実際の駆除現場でも、押入れなどジメジメした環境に長期間放置されている段ボールや新聞紙などは、よく食害が見られます。
また、シロアリは湿った木材から「水」を摂取しています。
日常生活の中で水は必要不可欠なもの。浴室やトイレ、キッチンなどの水回りは他の箇所に比べ、湿気の影響を非常に受けやすいので注意が必要です。
ただ、水を使わなければ大丈夫かと言われれば、答えはNOです。
一般的に4人家族が日常生活を送る際の呼気に含まれる水分量は、1年間で浴槽2杯分だと言われています。
高温多湿な日本での湿気対策は建物を守る上で非常に重要なポイントです。
木造建築の多い日本では、シロアリが必要とする「酸素」・「栄養」・「水」のすべてが揃ってしまいます。
しかし裏を返せば、このうちのどれか1つでも断つことができれば、シロアリから大切なお家を守ることができるということです。
シロアリが生きるために必要な「温度」
南は沖縄から、北は北海道の一部まで家屋を加害するシロアリの発生は日本全国で確認されています。
那覇の年間平均気温が23℃前後、札幌の年間平均気温が9℃前後と気温差は少なくありません。
ではシロアリが生息できる温度は何度くらいなのでしょうか。
答えは下限4~6℃、上限33℃前後と言われています。(ヤマトシロアリの場合)
しかし、本州でも真冬は4℃以下になる日はあり、ここ数年の夏場の気温は連日猛暑日(35℃以上)を記録しています。
活動できる気温の範囲を超えている地域でもシロアリが活動できているのは、なぜなのでしょうか。
それは、沖縄と北海道では建物の断熱性能や工法が大きく異なり、それぞれの地域の気候に合わせて、人々がより快適に生活できるように様々な工夫をしているからです。
シロアリの生息できる気温が人間に近いことをふまえると、人間が快適だと思う環境はシロアリにとっても快適な環境なのです。
シロアリが発生する原因は、酸素・水・栄養が適度に存在することや、温度と湿度が一定の範囲に保たれていることなど、様々な要素があります。
シロアリが発生しやすい「場所」
シロアリが発生しやすい場所といえば、浴室・洗面所・トイレ、次に多いのが玄関・勝手口です。
先ほどの内容を考えると、浴室などの水回りの発生原因はわかりやすいと思います。
そうです!水回りは「水分」が他の場所に比べて多いからです。
では、玄関や勝手口に発生しやすいのはなぜでしょう?
木造住宅の場合、玄関や勝手口部分は基礎が使われていません。
その代わりに、土留め板(画像参照)を使って、玄関や勝手口部分の土やコンクリートが床下側に流れ出ないように押さえる役割をしています。
土留め板はその役割上、木材部分が土や地面に接しているため、土中水の影響を受けやすい状況にあります。
そのため、シロアリの栄養源である木材に水分が多く供給されてしまい、発生しやすい場所になるのです。
年数が経過している掘りごたつなども、玄関と同じように土留め板を使っている場合があるため、注意が必要です。
建物の外ではウッドデッキや造作杭なども、シロアリが発生しやすい場所といえます。
これは、雨水による水分供給の影響が考えられます。
シロアリが活動しやすい「時期」
「啓蟄」(けいちつ)という言葉をご存知でしょうか。
二十四節気の一つで、「冬籠りの虫が這い出る」と言う意味です。
このことからも昆虫は冬場に休眠(冬眠)する種が多いです。
では、シロアリはどうでしょうか?
実はシロアリは休眠(冬眠)しません。
気温が高い時期に比べて動きが鈍くなりますが、厳冬期でも休まず活動しています。
図1. 温度による摂食量の違い(出典:しろありNo.70)
上の図はヤマトシロアリとイエシロアリの温度による摂食量の違いを示した図です
暑さに強いイエシロアリは30℃~35℃で、もっとも活発に摂食し、温度が下がると摂食量が低下することがわかります。
一方のヤマトシロアリは30℃前後が摂食のピークとなっています。
注目すべきは15℃を下回るとイエシロアリよりも喫食率が高くなる点です。
このことからもヤマトシロアリは比較的寒さに強いことがわかりますね。
ここまで解説してきたシロアリの生態をまとめると、シロアリは休眠(冬眠)せず、一年中活動していて、木材を好んで食べ、30℃前後の気温でより活発に活動することになります。
気温が高くなってくる春~夏にかけて、シロアリの被害拡大には注意が必要です。
シロアリ被害が拡大する原因は「繁殖スピード」にあり!
体長が1cmも満たないシロアリがどんなに木材を食べても、それほど怖がる必要はないのでは?と思われるかもしれません。
しかし、それは大きな間違いで、1cmにも満たないシロアリの被害が拡大する最大の要因は、その繁殖スピードなのです。
最初は雌雄1対の王と女王からスタートします。
その後、ヤマトシロアリで数個、イエシロアリで10~20個程度の卵を産みます。
最初に生まれた子どもの成長と共に、女王アリは産卵だけに専念するようになります。
数年でヤマトシロアリは数万匹、イエシロアリでは100万匹を超える大家族を形成します。
1匹は小さくとも集団で木材を加害することで被害が拡大します。
また、シロアリの身近な外敵はクロアリだと言われています。
時々床下で目撃することはありますが、そもそも床下にはクロアリが餌とする物が少ないため、好んで生息する場所ではありません。
他の害虫もシロアリが近付けば捕食される可能性がありますが、クロアリのように自ら捕食しにくることは好まないため、床下はシロアリにとって安全な場所といえます。
食料の供給については、木造家屋の場合、大げさに言えばほとんどが食料といえるでしょう。
また、直射日光も当たらず、風通しも悪く、高気密・高断熱の木造家屋の環境は、シロアリにとっては、夏は涼しく、冬は暖かい、快適な住まいになっているのです。
シロアリはどうやって床下に侵入するの?
シロアリは自らの体を乾燥から守りながら目的の場所まで移動するために、土や排泄物を固めてトンネルを作ります。
そのトンネルは「蟻道」(ぎどう)と呼ばれ、以下の写真のようにトンネルを作って建物に侵入します。
ベタ基礎や防湿コンクリートの場合でも僅かな隙間を見付けて蟻道を作り侵入します。
シロアリの対策は「早期発見」と「早期対策」が重要
シロアリの防止法を考える時に必要な知識をここまで解説してきましたが、いかがだったでしょうか。
木造家屋にお住まいになる以上は、酸素(空気)と栄養(木材)は断つことはできません。
唯一、水(湿気)についてはお住まいになる方が気をつけることで減らすことができますが、呼吸をするだけでも水分を供給していることになります。
やはり、シロアリ被害の予防法としては早期発見、早期対策に勝るものはありません。
人にとっても住みやすい環境はシロアリにとっても同じことが言えます。
そのことを踏まえて定期的にチェックすることが最も重要な対策でしょう。
万一シロアリを発見したとしても、定期的にチェックしているお家では慌てる必要はありません。
それほど大きな被害になる前に発見できているはずです。
被害が小さければ駆除も比較的容易ですし、修繕費も高額にはなりません。
信頼のできる専門業者に定期的に診てもらうようにしましょう。
■まとめ
シロアリの発生原因は「酸素」「水」「栄養」が揃うことです。
しかし木造住宅で生活するにあたり、上記3要素は切っても切り離せないものです。
また近年の快適な住宅構造の進化によって、家の中や床下はシロアリにとっても居心地の良い温度と湿度が保たれるようになりました。
繰り返しになりますが、シロアリ被害を防ぐ一番の予防策は「定期的な点検」です。
ご自身で点検することが難しい場合は、シロアリの専門業者に調査を依頼することをおすすめします。