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シロアリの被害の特徴とは?
シロアリ対策のカギは「早期発見」にあり
2024年5月公開
皆さんは住宅のシロアリ被害にどのようなイメージを持たれていますか?
「木材を食べる」といったイメージがあると思いますが、実際の被害状況を見たことがある方は少ないと思います。
今回はシロアリ被害について実際の写真を元に紹介しながら、シロアリの生態や被害発見時の対処方法などもあわせてご紹介します。
シロアリ発生の原因と被害内容とは
暗くて湿気のある暖かい場所をシロアリは好みます。
住宅の床下や屋根裏、浴室、畳の裏など、湿気の多い場所ならば、どこでもシロアリの住処になる可能性があるのです。
つまり、シロアリ被害の危険は、どんな家にもひそんでいます!
シロアリは直射日光や乾燥を嫌うため、床下などの木材やコンクリートの表面に「蟻道(ぎどう)」という半円状の土のトンネルを作り、その中を移動します。
上の写真はシロアリが作った実際の蟻道の様子です。
通称外蟻道と呼ばれ床下側からではなく外側からシロアリが侵入しようとしています。
シロアリ被害の初期症状は
床がきしむ音がしたり、へこんだりする
ドアの立てつけが悪くなる
壁や柱をたたくと空洞音がする
などの例が挙げられます。
上の写真では蟻道が床下の木材まで到達していますが、強度に関係するほどの食害はまだありません。
この時点で対策を行なえば被害は最小限で抑えることができます。
シロアリ被害末期の症状では木材の強度が著しく低下し、家の耐力に影響を及ぼす可能性が出てきます。
上の写真のような被害の場合、シロアリにより木材の内部まで食害されているため、交換や補修が必要な状態です。
シロアリ被害の経済的影響
先ほどの写真でもお伝えした通り、シロアリの被害を受け、土台や柱の強度が下がった状態では地震や台風等の災害時に、最悪の場合、家が倒壊する可能性もあります。
修繕費用が必要になり、場合によっては再建費用がかかります。床を剥がすなど、大規模になればなるほど費用は高く、修繕に要する期間も長くなります。
意外と身近なシロアリ被害
日本しろあり対策協会の調べによると、日本の木造家屋の3軒に1軒はシロアリ被害に遭っていると報告されています。
シロアリ防除薬剤の有効期間中であれば心配はありませんが、そうでない場合は注意が必要です。
災害とシロアリ被害
「阪神淡路大震災」で倒壊した住宅の大半がシロアリ被害や腐朽被害などで家の強度が低下していたことが、国土交通省などの調査によって指摘されています。
例えば、神戸市東灘区では、シロアリ被害や腐朽被害で建物の8割が全壊したという調査結果も報告されています。
反対にシロアリ被害がなかった住宅は2割しか全壊していませんでした。この結果からシロアリ被害のあった住宅は、地震が原因で倒壊する可能性が非常に高いということがわかります。
地震に備えるという観点でも、シロアリ対策はしっかりと行ないましょう。
地震以外では台風や大雨による床下浸水後の処理にも注意が必要です。
床下浸水が直接シロアリ被害の原因になることはありませんが、水抜きや換気を行なわなければ床下に湿気が溜まってしまいます。
つまり、シロアリが好む環境になってしまうのです。
床下浸水後は「排水」、「乾燥」、「薬剤処理」を行ない、シロアリ被害のリスクを軽減しましょう。
シロアリの種類と特性
シロアリと一口にいっても、その種類は多く、特性も違います。ここで詳しい生態や特徴についてご説明します。
シロアリの生態
シロアリは、昆虫学上ではハチの仲間であるアリの仲間ではなく、ゴキブリの親戚です。
また、シロアリは家屋に対して食害を与える存在ですが、森林の生態系においては枯れ木や落ち葉などを分解し、土に還すという重要な役割を担っています。
こちらの記事でも詳しく説明していますので、ぜひご参照ください!
シロアリの活動時期は?
温度によって活動量は大きく変わりますがシロアリは休眠せずに1年中活動しています。
春に羽アリが出るため、夏や秋、冬は「春の羽アリのシーズンが終わったから安心」と思ってしまいがちですが、それは間違いです!
シロアリは気温が高いほど元気になりますし、ヤマトシロアリは冬でも6℃程度の温度で活動できるといわれています。
シロアリの食害
シロアリは地中から建物に侵入してくることが多いので、建物の下部である土台や束柱などが食害されます。
その際に地中から柱に沿って「蟻道(ぎどう)」と呼ばれる道を作って建物に侵入します。
シロアリは日当たりが悪い・湿度が高い・温度が高い・風通しが悪い場所を好みます。
家屋であれば、北側で、台所・洗面所・お風呂場・便所などの水回りがシロアリの被害を受けやすい場所になります。
現在、日本に分布するシロアリは24種類います。
その中でも建築物に被害を与えるのはヤマトシロアリ、イエシロアリ、ダイコクシロアリ、アメリカカンザイシロアリの4種類だけです。
その中でも大きく被害を与えているのはヤマトシロアリとイエシロアリです。
ヤマトシロアリは北海道北部を除く日本全土に、イエシロアリは千葉県以西の海岸線に沿った温暖な地域、南西諸島、小笠原諸島に分布しています。
シロアリ被害の予防と早期発見
シロアリ被害には具体的にどのような特徴があるのでしょうか。早期発見のポイントと合わせてご説明します。
この症状があったら気を付けて! シロアリ被害の特徴
シロアリは木材の固い年輪の部分は食べずに、やわらかいセルロースという部分を食べます。
木材が全部なくなることはなく、年輪部分が残るのでスカスカの状態になってしまいます。
扉が開けにくい、床がきしむ等の症状があったら要注意!
シロアリ被害によって木材がスカスカの状態になっているかもしれません。
その他にも蟻道を見つけた、家の周りの木材やウッドデッキにシロアリ被害のようなものがある、玄関の柱の下がスカスカ等、目に見えてわかる症状があったらすぐに専門家に確認してもらいましょう。
シロアリ被害の早期発見のポイント
日頃からこまめな点検やお手入れをすることで、シロアリ被害を早期発見できることがあります。
家の外周でいえば
基礎コンクリートに不自然な土の道がないか?
基礎に設置された換気口が荷物などでふさがれていないか?
家の周囲や庭などに廃材などを立てかけていないか?
このような点に注意しましょう。
床下に関してはプロによる定期的な点検を行なうことで、シロアリ被害を早期に発見できる確率が上がります。
自分でもできる定期的な点検については、以下の記事で詳しくご説明していますので、ぜひ参考にしてくださいね。
シロアリ被害に遭った時の対処法
シロアリ被害はそのまま放置していると、どんどん拡大していきます。
シロアリは木材を食べ尽くすと次の木材を求めて移動するからです。
シロアリ被害に遭った時は早い段階で駆除工事をするしか改善の余地はありません。
放置すると被害はみるみるうちに進行します。
シロアリ駆除は自分でできる?
そもそもシロアリ駆除は自分でできるものでしょうか?
ハッキリ申し上げて、自己流での駆除はおすすめできません。
DIY自慢の方でも、動きにくい床下でできる作業は限られています。
また、感電や床下配管を破損してしまうリスクもありますので、細心の注意が求められます。
もちろん、ホームセンターなどで販売されている一般向けの薬剤を使用することもできますが、床下全体に薬剤を浸透させなければならないことを考えると自己流の駆除はやはりおすすめできません。
業者選びのポイント
定期的な点検や駆除工事を行なう際に重要になるのは業者選びです。
費用は住宅の構造、工法、サービス内容などによって違いがあります。
サービス内容や業者の担当者の人柄など、信頼できる業者であるかを総合的に判断して決めることが大切です。
また、見積もりを取る際は、「複数の業者」から取るようにしましょう。
床下診断と見積までは無料で実施している業者もあります。
専門業者による施工費用の相場や見積もりの実態については、以下の記事で詳しくご説明していますので、ぜひ参考にしてくださいね。
業者による駆除作業の流れ
ここからは、実際に施工業者にシロアリ駆除を依頼した場合の作業の流れをご紹介します。
【STEP1】訪問・挨拶・工事前の説明
担当作業員より、シロアリ駆除作業の内容と段取りを確認させていただきます。
どのような工事をするのか?
どのような段取りで作業するのか?
不明な点や心配な点もあると思いますので、この際に遠慮なく質問するようにしましょう。
【STEP2】室内の養生
床下での作業が中心となるためホコリや汚れ対策として、床下進入口のある部屋を中心に作業で出入りする通路はすべて養生します。
作業中はホコリっぽい床下との出入りが頻繁に行なわれるため、最新の注意を払って養生を行ないます。
<ご注意ください!>
床下への出入り口は、作業中は開いたままの状態になっていて、周辺には工具や機材が置いてあります。
安全のため、施工終了までは近づかないようにお願いします。お子様やペットは特にご注意ください。
御用がある際は作業員までお声掛けください。
また、ニオイに敏感な方や気になる方は、2階などで過ごされたり、換気を十分にしていただくことをおすすめします。
【STEP3】機材・薬剤の準備
養生と並行して機材と薬剤の準備を行ないます。
動力噴霧器、薬剤タンク、ノズル、電気ドリルがシロアリ駆除で使用する主な機材です。
薬剤を作るための水道と機材を動かすための電源(コンセント)はお客様の家のものをお借りすることが多いです。
機材と薬剤の準備が完了したら、作業員は床下用のツナギと帽子、頭巾、ライト、ゴーグル、防塵マスク、作業用手袋を装着します。
床下での作業は暗く狭い場所で行なうため、作業効率と作業員の安全の両方を考えなくてはいなりません。
作業に集中できるように万全の準備を行ないます。
【STEP4】木部処理
準備が完了したら、床下に入って駆除作業を始めます。
駆除作業は木部処理から実施します。
被害がない柱・土台には表面に薬剤吹付処理を行ないます。
シロアリ被害がある箇所には穿孔注入処理を行ないます。
シロアリは木の内部を食べて進行しますので表面に薬剤を吹き付けるだけの処理では不十分です。
以下の写真のように、木材に穴をあけ、内部にも薬剤を浸透させる必要があります。
穴をあけ薬剤を浸透させた後、木栓で蓋をし、さらに薬剤を浸透させます。
【STEP5】土壌処理
木部処理後は床下の土壌面全体に薬剤を散布します。
シロアリは土の中から侵入しますので土壌の表面にバリアを張ることでシロアリが進入できなくなります。
床下がコンクリートの場合でも、亀裂や隙間からシロアリが床下に侵入する可能性がありますので、コンクリートの表面全体に薬剤を散布します。
【STEP6】床上からの処理
玄関や勝手口、浴室は床下に空間がない為、床上から薬剤処理を行ないます。
【STEP7】片付け・説明
床下・床上の作業が終了したら、作業員が片付けを行ないます。
床下進入口付近は養生をしたとしてもホコリや汚れが発生してしまう可能性がありますので、「来たときよりも綺麗に」をモットーに掃除を行ないます。
片付けが終了したら工事後の注意点や実際に処理した箇所の写真などをお見せしながら作業後の説明を行ないます。
見えない所の作業が多いため、不明な点や気になる点があれば、遠慮なく作業員に質問してください。
プロの目線で納得できるアドバイスをもらえるはずです。
保証やアフターサービスが発生する場合もこの機会に内容を確認しましょう。
被害の初期段階での対策
シロアリ被害を放置しておくと被害が進行し、大規模な修繕が必要になってしまう可能性があります。
そうならないためにも、早期発見と早期対策を行なう必要があります。
定期的な点検でシロアリ被害のチェックを行ない、被害を発見した場合は、なるべく早く専門業者に相談し早期対策を行ないましょう。
■まとめ
シロアリ対策の基本は「被害に遭ってから」ではなく「被害に遭う前に」です。
日頃から様々なポイントをチェックし、気になる症状があれば、できるだけ早く専門業者に相談しましょう。
また、シロアリ対策は地震などの災害時の対策にも繋がります。大事な命と家を守るためにも早期対策をおすすめします。