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第 1 話
夏・秋 シロアリの注意ポイントはココだ!
「春の羽アリのシーズンが終わったから、もう今年は大丈夫!」
…そんな風に考えているあなた、それは大きな間違いです!
じつは、シロアリは1年中活動する虫です。
そこで、この『アサンテシロアリ研究所』では、季節ごとの「シロアリに注意すべき理由」をご紹介していきます。
今回は夏と秋の、シロアリに気を付けなくてはいけない理由についてです。
シロアリは気温が高いほど元気になる!
まず初めに「気温」の観点からシロアリの動きを見ていきましょう。
じつは、シロアリは温度によって、その活動量が大きく変化します。
早速ですが、気温15℃の環境に置いたシロアリと、30℃に置いたシロアリの動きの違いを見比べてみましょう。
■ヤマトシロアリ
※クリックすると虫が表示されます!ご注意ください!15℃←左 右→30℃
■イエシロアリ
※クリックすると虫が表示されます!ご注意ください!15℃←左 右→30℃
動画を見てもわかるように、動きの速さがかなり異なっていますね。
温度によって活性に違いがあることがよくわかります。
活動量が増えれば、自ずとエサを食べる量も増えていきます。
下のグラフは、職蟻(しょくぎ=働きアリ)300頭をさまざまな温度下に9日間置いた時の、平均摂食量(エサを食べた量)を示したものです。
図1. 温度による摂食量の違い(出典:しろありNo.70)
シロアリの種類によって活動量は異なりますが、30℃から35℃の時にエサを食べる量が最も増えていることがわかります。
つまり、気温が高い夏から秋にかけてはシロアリの活性が高くなり、エサを食べる量も多くなるということ。
気付かないうちに被害が進んでしまう可能性があるのです。
シロアリはムシムシする環境も大好き!
次に「湿度」の面からシロアリを見てみましょう。
夏と秋は湿度が高く、ムシムシとした暑さが特徴的ですよね。
じつは、シロアリの活動は湿度にも大きく左右されることがわかっています。
下のグラフは、一定の相対湿度によるシロアリの摂食量を示したものです。
図2 一定相対湿度条件下におけるヤマトシロアリの摂食量 (Nakayama et al. 2002を改変)
図3 一定相対湿度条件下におけるイエシロアリの摂食量 (Yusuf et al. 2000を改変)
※相対湿度…空気中に含まれる水蒸気の「割合」のこと。一般的に「湿度」という時に使われる数値で、「%」で表される。
シロアリの種類によって差はありますが、相対湿度70%から80%あたりで餌を食べる量が増えることがわかりますね。
次に、2019年の各月の湿度平均を見てみましょう。
表は国土交通省のホームページに掲載されている、東京の月ごとの平均湿度です。
表1 2019年の月ごとの湿度平均(東京)
1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
51 | 59 | 60 | 63 | 65 | 81 | 89 | 80 | 79 | 80 | 69 | 66 |
出典:国土交通省 東京 2019年(月ごとの値)詳細(気温・蒸気圧・湿度) 抜粋
https://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/view/monthly_s1.php?prec_no=44&block_no=47662&year=2019&month=&day=&view=a2
もちろん年によって違いはありますが、梅雨やゲリラ豪雨、台風などで降水量が多くなる6月から10月頃に、湿度は比較的高くなる傾向にあります。
つまり、シロアリが最も活動しやすい70%から80%ほどの湿度である夏・秋の時期は、一段とシロアリに気を付ける必要があるのです。
また、下の表は、湿度におけるシロアリの蟻道(ぎどう=シロアリの通り道)構築速度を表したものです。
表2 相対湿度とイエシロアリにおける蟻道構築速度との関係 (吉村ら を改変)
湿度が上がると、蟻道を構築する速度が大幅に増すことがわかります。
湿度の高い時期は、シロアリたちも新しいエサ場を探す動きが活発になることが予想されます。
※蟻道…シロアリが柱に沿って作る土の道。シロアリはこの中を通って建物内に浸入します。
下の表は、含水率(木材に含まれる水分量)によるシロアリの摂食量の変化を示したデータです。
表3 異なる含水率の試験体を選択摂食させた場合のイエシロアリ職蟻およびヤマトシロアリ職蟻による摂食率 (Nakayama et al. 2005を改変)
シロアリの種類によって違いはありますが、木材に含む水分によっても摂食量に差が出ることがわかります。
雨漏りや日頃の水漏れ、台風などによって常に水が木材にかかってしまい、建築部材の含水率が高くなっている場合はとくに注意が必要です。
床下に異常がないかどうかの診断をオススメします。
夏・秋のシロアリチェックポイント まとめ
気温が高い夏~秋にかけては、シロアリの活動量が活発になり、エサを食べる量が増える! 夏や秋に多い夕立、台風、ゲリラ豪雨で床下の湿度や含水率が高くなり、シロアリが過ごしやすい環境になっている可能性がある!「羽アリシーズンの春が終わったから大丈夫」ではなく、夏・秋も引き続き注意する必要があります。
少しでも気になる点があったら、床下無料診断を受けてみてはいかがでしょうか。
参考文献
- 吉村剛:シロアリと水の話、2003
https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/51372/1/KJ00004239218.pdf - 山野勝次、渡部雅行 : しろありNo.70、 17-20、 1987
- T. Nakayama, Y. Yanase, T. Yoshimura, Y. Fujii, and Y. Imamura: Effects of Humidity Changes on the Feeding Activity of a Pest Termite, Reticulitermes speratus(Kolbe). : Jpn. J.Environ. entomol. Zool., 13, 125-131, 2002
- S. Yusuf, Y. Yanase, Y. Sawada, Y. Fujii, T. Yoshimura and Y. Imamura: Evaluation of Termites Feeding Activities by Acoustic Emission (AE) under Various Relative Humidity (RH) Conditions. : 3rd Inter. Wood Science Symposium Proceedings, 173-178, 2000
- 吉村剛、高橋旨象、伏木清行、斎藤隆信、勝沢善永:第50回日本木材学会大会研究発表要旨集、482、2000
- T. Nakayama, T. Yoshimura and Y. Imamura: Feeding activities of Coptotermes formosanus Shiraki and Reticulitermes speratus (Kolbe) as affected by moisture content of wood. : J. Wood Sci., 51, 60-65, 2005